中国のファーウェイが復活を遂げている。
今日のニュースを見て思った。まさに窮鼠猫を噛む。
追い詰められて逃げ場がなくなったネズミが猫を咬むように見えた。
米国の制裁は中国企業を苦しめたものの、中国の技術革新を促進する結果を生む側面もあったようだ。
ファーウェイ「包囲網」突破 米制裁後4割増収、最高迫る
第1次トランプ政権下の19年以降、ファーウェイに対する制裁は段階的に厳しくなった。米政府は事実上の禁輸措置を課す「エンティティー・リスト」にファーウェイを加え、米国技術を使った製品輸出を禁じた。
ファーウェイは高性能半導体の製造を委託していた台湾積体電路製造(TSMC)と取引できなくなり、高速通信規格「5G」のスマホをつくれなくなった。
米制裁でファーウェイは「天国から地獄」に突き落とされた。米調査会社IDCによると、20年4〜6月期を最後に世界首位だったシェアは急落し、21年1〜3月期から5位圏外に消えた。
制裁発動から6年。トランプ氏が米大統領に返り咲いたが、ファーウェイも息を吹き返している。
香港の調査会社カウンターポイントによると、24年10〜12月期の中国の出荷台数が前年同期比15.5%増え、4年ぶりにシェア首位に立った。人工知能(AI)機能が規制で封じられた「iPhone16」の不振が響き、出荷台数を18.2%減らした米アップルと対照的だ。
業績も復調した。ファーウェイの梁華・董事長は広東省政府が開いた会合で24年の売上高が前年比約2割増の8600億元(約18兆円)超だったもようだと明かした。制裁後に最も落ち込んだ21年に比べて約4割増の水準に回復し、過去最高の20年にも迫る。
復活の原動力は、米政府が封じ込めたはずの半導体の技術の進化だ。
ファーウェイ子会社で半導体設計を手がける海思半導体(ハイシリコン)と連携して回路線幅7ナノ(ナノは10億分の1)メートルの先端品を開発し、半導体受託生産大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)が生産しているとされる。
ファーウェイは半導体設計子会社のハイシリコンと連携し、5G相当の性能を出せる高性能半導体を開発し、国内で生産しているとされる
中国で開発から生産まで一貫した独自半導体は23年8月発売の「Mate60」に搭載し、5G相当を実現した。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は当時の報告書で「中国の技術力を低下させることに失敗した」と結論づけた。現在、商用レベルの最先端半導体の回路線幅は3ナノで、TSMCが先導する。ファーウェイは2世代遅れの技術水準まで追い上げている。
ファーウェイは研究開発力を磨き、米の「包囲網」を正面から突破した。売上高研究開発費比率は制裁前の10%台から足元では20%台に上昇した。23年の研究開発費は約3兆4000億円と過去最高で、24年も増えたもよう。
中国政府もファーウェイを支えている。習近平(シー・ジンピン)指導部はハイテク産業への投資を拡大する「新質生産力(新しい質の生産力)」を提唱する。ファーウェイの開示資料によると、23年の政府補助金は約73億元と18年の5倍近くに増えた。ほとんどは研究開発費用だ。
トランプ米政権が今後、一段と対中包囲網を厳しくする可能性がある。米国や日本、韓国など一部西側諸国での販売は制約が残る見通し。今後、ファーウェイに対する規制や警戒感が薄いグローバルサウスの開拓の成否が成長を左右する。
中国のAI新興、DeepSeek(ディープシーク)は最新の高性能半導体に頼らず米オープンAIに匹敵するAIモデルを開発したと主張し、世界に衝撃が走った。半導体を独自開発したファーウェイも含め、米政府が課した制約が中国の技術革新を促す皮肉な結果を招いている。
プラザ合意した時の日本もこんな状況だったかもしれない。
1980年代前半のアメリカでは厳しい金融引き締めが行われており、金融引き締めに伴い金利が上昇、世界中から多くのお金がドルに集まってきた。その結果、ドル高が進み、アメリカは貿易赤字を抱えていた。
プラザ合意の主な内容を簡単に言えば、「参加各国が外国為替市場に協調介入して、ドル高を是正しましょう」と。発表後に円相場は1ドル235円から約20円下落。翌年には150円台になり、円高・ドル安の目的は達成された。
米国主導の為替是正が円高不況を生み出して日本企業は苦しんだ。
ただし日本は終わる事なく、むしろ困難を糧にして産業構造の転換を果たした。
急激な為替変動に対応するため、自動車メーカーや電気電子メーカーは海外進出に積極的に乗り出した。米国やアジアでの生産比率を高めて貿易摩擦や円高に左右されない産業構造を作り出した。
この産業構造の転換による日本企業の製造業の強化はプラザ合意があったことで促進されたものとも言える。
今回の米国による中国締め出しも同じ結果になりつつあるのではないか。
中国を警戒して米国の保護主義のため始めた政策が、時間が経つと中国産業の高度化を促したという皮肉な結果を生むことになりつつあるかもしれない。